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根拠なき不安を払拭する新しいユーザー体験 専門家がみるモバイル決済とキャッシュレス
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根拠なき不安を払拭する新しいユーザー体験 専門家がみるモバイル決済とキャッシュレス

マネーツリー編集部
2018
04
17

2018年3月27日、主に金融機関を対象とした、マネーツリー主催のイベントを開催しました。第一部では「迫りくる決済イノベーションとリテールのこれから」と題し、ペイメントキャッシュレス、リテール戦略について、ジャーナリストの方々をお迎えしてパネルディスカッションをおこないました。また、第二部ではMoneytree LINK初となるカード事業での導入事例である三菱UFJニコスやオンラインレンディングの与信分析に活用されているクレジットエンジンの導入事例をご紹介しました。

今回のブログでは、第一部のパネルディスカッションの様子をレポートします。

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向かって左から大谷和利氏、岩田昭男氏、マーク・マクダット、鈴木淳也氏

近年、Apple Payをはじめ様々なペイメントが浸透し、消費者のキャッシュレスへの意識が高まっています。また店舗も2020年のオリンピックを目標に、海外からの消費者を意識しキャッシュレス対策を始めようとしています。

キャッシュレス社会の実現に向けて必要なことは何なのでしょうか。そしてキャッシュレス社会で生き残っていくにはどうしたら良いのでしょうか。

パネリストは岩田昭男氏(消費生活ジャーナリスト)、鈴木淳也氏(モバイル決済・ITジャーナリスト)、マーク・マクダット(マネーツリー常務取締役 プラットフォーム事業部)の3名。モデレーターはマネーツリーのブログでもおなじみの大谷和利氏(ITジャーナリスト)がつとめました。

キャッシュレスの歴史は、生活への密着度が作った

はじめに、大谷氏から日本におけるクレジットカードの現状について説明がありました。

クレジットカードの利用は年々増えてきているものの、カード決済比率は15.6%とまだ他の国と比べると低いのが現状です。一方でフィンテック企業の台頭により、銀行の業務が強化されていることに触れ、クレジットカード事業者と銀行との連携によって新しいビジネスが生まれたり、カード利用者数を増やすチャンスになったりという可能性を示唆しました。

続いて、30年に渡ってクレジットカードの情報を追いかけ続ける岩田氏が、クレジットカードやキャッシュレスの歴史を説明しました。

90年代までは現金主義がとても強く、クレジットカードはあくまでも「ハレの日に」・「大きな金額のものを買う時に」使われる、現金の補助的な役割しか持っていませんでした。また「クレジットカード=借金」のイメージも強く、多重債務や自己破産などと関連付けられ、恐がられるという側面もありました。

そこに変化が訪れたのは2001年。Edy、Suicaという電子マネーが登場したのです。特にSuicaは毎日の通勤・通学で使われるため、電子マネーを日常的に使うきっかけとなりました。2007年には、流通系のnanacoとWAONが立て続けに登場し、電子マネーは消費者にとって更に身近なものになりました。

「地方で電子マネーについて講演した時、会場が若い主婦の方ばかりで、しかもみんな目を輝かせながら話を聞いていて驚いたことがありました。数ヶ月前に近くにイオンモールができ、みんなWAONを工夫しながら使っていたんです。プリペイドで月々の予算の分だけチャージしておけば家計の管理がしやすく、しかもポイントも溜まるということで、WAONが主婦の皆さんの喜びを生み出していたんです。使う分だけチャージできるため、現金の延長として使いやすく、現金主義の方にも受け入れられやすかったのも大きいです」(岩田氏)

岩田氏によれば、消費者の生活に密着し、更に現金にはないメリットを提供することで、まずは電子マネー、そしてクレジットカードへとキャッシュレスが進んできたとのこと。

一方で店舗側も、キャッシュレスに対応していないことによる機会損失を防ぐため、クレジットカードや電子マネーの導入が増えてきているようです。

クレジットカードおよびキャッスレスの歴史については、岩田氏にMoneytree LINKブログにて詳細に連載していただきます。長年業界を見てきた岩田氏だからこそ見える歴史やトレンドを、毎回語っていただく予定です。

モバイルペイメントの動向と「ユーザー体験」の重要性

話はApple Payをはじめとするモバイルペイメントに移り、モバイル決済ジャーナリストの鈴木氏は、日本だけでなく世界的に見てもモバイルペイメントの普及は遠いとの見方を示しました。しかしPCよりもスマートフォンの使用が活発な地域においては、モバイルペイメントが進む可能性はかなり高いとも述べました。

マークは、モバイルペイメントには消費者の根拠のない不安が存在するため、その普及には先ほどのWAONの事例のように決済アプリや店舗による「良いユーザー体験の提供」が必要だと指摘しました。

「例えば、コンビニエンスストアではクレジットカードがサインレスで利用できます。現金よりも会計がスムーズで、一度体験すればそのメリットに気づき、クレジットカードの利用が進むはずです。モバイルペイメントについても同様のことがいえるのではないでしょうか」(マーク)

この「良いユーザー体験を提供するヒット商品が出れば、モバイルペイメントもキャッシュレス化は一気に加速する」という点には、登壇者全員が同意していました。

レジに並ばず会計完了!「Amazon Go」が提供する新しいユーザー体験

鈴木氏はキャッシュレスにおける「良いユーザー体験」の可能性の一つとして「Amazon Go」を紹介。アメリカ・シアトルに1月にオープンしたばかりの店舗に実際に出向いた際の様子を、写真を交えながら詳細にレポートしました。

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Amazon Goは、会計を無人でおこなえるコンビニエンスストアのような店舗です。顧客がしなければいけないことは、専用のアプリをダウンロードし、そこに表示されるQRコードを入店時にゲートにかざすだけ。後は買い物袋にほしい商品を入れていけば、何の商品を手にとったかを店舗がセンシングして金額を自動で計算してくれます。レジに並ぶことなくそのまま店を出ていくことができ、会計は出口ゲートを出てから1時間程度で確定するシステムになっています。

「会計完了前に顧客を外に出すのは、小売としてはありえないことでした。Amazon Goはスピーディな買い物というユーザー体験を提供しています」(鈴木氏)

鈴木氏にはAmazon Goをはじめ、AIとリアル店舗、決済の最新トレンドについてMoneytree LINKブログにて詳細にご紹介いただく予定ですので、こちらもご期待ください。

岩田氏はAmazon Goのシステムを「小売における最高形態に近い」と評し、日本でも受け入れられそうだと述べました。今後はAmazon Goのシステムを他社に提供し、ライセンシングビジネスを展開していくことも考えられそうです。そうなった時、日本におけるリテールのユーザー体験は様変わりするでしょう。それは金融機関やその他のサービスも無視できるものではなく、同様に大きな変化を求められるはず。私たち金融サービスも、先を見据えた対応が必要となりそうです。

キャッシュレス社会のカギは、マーケティングデータの活用

ここまでキャッシュレスの歴史と現状を見てきましたが、今後の見通しはどのようになっているのでしょうか。

マークは、銀行法の改正によって、マネーツリーをはじめとする「電子決済等代行業者」による更新系APIを使った入出金が可能になると、カードビジネスのあり方も大きく変わると指摘しました。例として、消費者の銀行口座から店舗の銀行口座へ直接お金を移動させて会計する決済方法を挙げ、それが可能になればクレジットカードの手数料よりも安価に導入でき、従来の加盟店手数料ビジネスは成り立たなくなると述べました。

岩田氏も、クレジットカードの形態は、ポイントを貯めてお得感を得るという従来の使い方から大きく変わるとの見方を示しました。

キャッシュレス社会においては「お客様はどのようなものを買っているか」というマーケティングデータを消費者自身と共にどう活用していくか、消費者にどのようなメリットを提供していくかが重要なポイントになりそうです。

「支払手段の多様化にともない、消費者のデータはバラバラになっています。マネーツリーは、それを一箇所に集めて持つという機能を、家計簿アプリとしても、Moneytree LINKという基盤としても提供しています。マーケティングデータへのニーズを通じ、様々な決済ビジネスをつなげていけるのではないかと考えています」(マーク)

マークは、マネーツリーが「お客様主導のマーケティングデータ」のハブになっていければ、と展望を語ると共に、一方的なデータ利活用ではユーザーの信頼を失い、サービスを利用してもらえなくなると指摘。いかにお客様に利便性を返せるユーザー体験を提供できるかが肝になってくると、本パネルディスカッションを締めくくりました。

マネーツリー の事業部長兼常務取締役・共同創業者、マーク マクダッド

Moneytree LINKは、従来のデータマーケティングの根底を覆し、「いつ・どこで・どのように」データを共有するかを、データ所有者自身が選択管理できる環境を構築しています。これは「データポータビリティ」という考え方に基づいており、導入先の企業でもプライバシーに配慮したプラットフォーム上で、ユーザー体験を設計することができます。これこそが、これからのリテール動向を見据えたサービス設計をしているマネーツリーの強みであり、多くの銀行や金融機関に選ばれている理由の一つです。

データポータビリティについての詳細はこちらのEbookもご参考ください。

                     

金融データの最前線_FinSumレポート

今回パネリストとして登場された岩田氏はマネーツリーのブログに寄稿してくださっており、鈴木氏もこれから連載を開始されます。両氏の豊富な知識を元にした、ためになる連載をどうぞお楽しみください。

筆者プロフィール

マネーツリー編集部

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