高齢化が進み、医療費の負担が年々増加するなか、2017年から「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が導入されました。スイッチOTC医薬品を購入した場合に所得控除を受けることができるもので、日本国民がみずから自分の健康管理をすることを推進しようとするための税制優遇策です。
この制度を活用するためには、どのような条件を満たせばいいのでしょうか。今回は、セルフメディケーション税制の仕組みと手続きについて、簡単に解説します。
セルフメディケーション税制は、2017年から導入された税制優遇策です。「健康の維持増進・疾病予防への一定の取り組み」を行う個人が、「スイッチOTC医薬品」を購入した金額に応じて、所得控除を受けることができるようになっています(注)。
「一定の取り組み」としては、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診が挙げられています。
会社員の人であれば毎年行われる健康診断、自営業者などの人はインフルエンザの予防接種や市町村などが行うがん検診や特定健康診査を受けていれば、一定の取り組みを行っていると認められます。
「スイッチOTC医薬品」とは、医療用から転用された医薬品であり、特定の有効成分が含まれているものです。通常、スイッチOTC医薬品は、パッケージに「¥」と書かれたマークが印刷されています。ただ、マークの表示がなくてもセルフメディケーション税制の対象になっている医薬品もあります。マークの表示は義務付けられていないこと、対象となる医薬品として指定される商品が増えていく関係でマークが印刷されていない古い商品が店舗に並んでいる可能性もあることなどが理由です。
なお、対象品目は2か月に1回更新されることになっており、追加・削除が随時行われます。最新のスイッチOTC医薬品は、厚生労働省のホームページで確認することができます。また、レシートに対象のOTC医薬品であることを示す印が印刷されているので、そこで確認することも可能です。
(注)2018年1月現在、セルフメディケーション税制が適用されるのは、2017年から2021年までとなっています。恒久的な制度になるかどうかは未定です。
セルフメディケーション税制の所得控除は、納税者が一定の取り組みを行っていれば、「自己または自己と生計を一にする配偶者、その他の親族」のために購入したスイッチOTC医薬品の購入金額も対象になります。家族も含めたスイッチOTC医薬品の購入金額の合計額が12,000円を超える場合、その超えた部分について最大88,000円まで所得控除を受けることができます。
例えば、スイッチOTC医薬品の購入金額が30,000円の場合、減税額は次のようなイメージです。
{:style="max-width: 450px;"}
上記のように税負担が軽減されることになりますが、セルフメディケーション税制を利用する場合には、「医療費控除が使えなくなる」ということに注意しましょう。すべての医療費の金額によっては、セルフメディケーション税制よりも医療費控除の方が、メリットが大きくなる場合もあるのです。
スイッチOTC医薬品の購入金額が30,000円でも、(スイッチOTC医薬品も含む)すべての医療費の金額が120,000円であれば、それぞれの減税額は次のようになります。
{:style="max-width: 400px;"}
このように、医療費控除を選択すると控除額が多くなるケースもあるため、両方の控除額を計算した上で、どちらを活用するべきかをチェックしておくことをおすすめします。
セルフメディケーション税制で所得控除を受けるためには、確定申告をしなければなりません。所得税の確定申告をすることができるのは、翌年の2月16日から3月15日の間です。2017年分であれば、2018年の2月16日から3月15日に、確定申告しましょう。
確定申告をするときに、「セルフメディケーション税制の明細書」と「一定の取り組みを行ったことを証明する書類」を添付する必要があります。
セルフメディケーション税制の明細書は、国税庁のホームページにフォーマットが用意されていますので、そこでダウンロードして作成することができます。
領収書原本の提出は不要で、明細書のみの添付で構いません。しかし、内容確認のために税務署から領収書の提示や提出を求められる場合もあるため、購入したときにレシートを必ず受け取り、確定申告期限の翌日から5年間保管しておきましょう。
一定の取り組みを行ったことを証明する書類は、領収書(原本)や健康診断の結果通知書を提出します。ただし、氏名、取り組みを行った年、保険者・事業者・市区町村名または医療機関や医師の名前等の記載があるものに限られます。証明書としての要件を満たしているかを確認するのが難しそうだと思うかもしれませんが、通常は、すべて記載されている領収書や結果通知書をもらうことができるので、心配いりません。
これらの書類を添付して確定申告を行えば、所得税と住民税が減額されます。所得税の還付金は、数か月後に、指定した銀行口座に還付金が入金されます。住民税は、確定申告を行った後に課税されることになるため、6月からの住民税額が減額された金額に調整されます。
セルフメディケーション税制や医療費控除の対象になるということは、1年間の医療費がかさんでいる状態です。つまり、それだけ病気になることで家計を圧迫してしまっているとも言えるのです。だからこそ、払いすぎている税金を返してもらえるように、税制をしっかりと理解しておきたいところですね。
2012年に日本で起業。2013年より自動で一括管理する個人資産管理サービス「Moneytree」を提供し、AppleのBest of 2013、Best of 2014を2年連続で受賞。2015年より金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」を企業向けに開始し、業界標準の金融系APIを提供している。2017年よりオーストラリア市場でサービスを開始。創業当初よりSalesforce Ventures、SBIインベストメント、三大メガバンク系ファンド、地方銀行系ベンチャーキャピタル、海外大手運用会社から出資を受ける。お金にまつわるもっとも信頼されるプラットフォームの構築を目指す。
当社ウェブサイトは、外部サイトへのリンクを含んでおります。リンク先サイトでの個人情報への取扱いに関しては、そのリンク先サイトでの個人情報保護方針をご確認ください。 当社の個人情報保護方針はそのリンク先サイトで提供されている内容に責任を負うものではありません。
制度を知って、賢くお金を管理しよう
さっそくMoneytreeを試してみよう