ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。拙著『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』で富裕層の生態について書きましたがその一部をご紹介します。
米朝首脳会談が行われたシンガポールのセントーサ島は超富裕層が住む別世界です。外国人が唯一土地付きで購入できるセントーサコーブは不動産価格が数十億円で、個人所有のクルーザーが停泊するエリアもあります。フェラーリなどの高級車が多く、リゾートのカートでプライベートビーチまで行ける世界が広がります。
ボストンコンサルティンググループの世界の家計金融資産に関する調査(2015)によると、金融資産が1億ドル(約110億円)を超える超富裕層世帯の割合が多い国は、1位が香港(10万世帯あたり15.3世帯)で2位がシンガポール(同14.3世帯)です。シンガポールがいかに超富裕層の密度が濃い国かが分かります。
シンガポールでは所得税が低く、キャピタルゲインに対して税金がかからないので世界中から大富豪が集まります。また、贈与税や相続税もないので祖国の税制にもよりますが、子供や孫の代にも資産を引き継がせやすいのです。
シンガポールには有名な大富豪達がたくさん住んでいます。例えば、世界的な投資家ジム・ロジャーズ氏やフォーブスの出しているシンガポールの長者番付で上位にランクインしているフェイスブックの共同創業者であるエドゥアルド・サベリン氏、スペインのサッカーチーム「バレンシア」のオーナーとして有名なシンガポールの投資家のピーター・リム氏などです。
シンガポールの長者番付トップは不動産デベロッパー業を営むファーイーストオーガニゼーションの子息達で約1兆の資産を保有しています。長者番付に名を連ねる大富豪の多くは不動産、投資家、石油取引、銀行業などが目立ちます。
建国53年の若く、小さな国にも関わらず、なぜこれほど富豪が多いのでしょうか。理由の一つは、収入に上限がなく税率が低いと言うことが挙げられます。
例えば、営業職の会社員だったとしても、年収1億円以上稼ぐことが可能で、所得税の最高税率も22%です。日本の場合、所得税の最高税率は45%、住民税は10%なのでその差は大きいです。
また、贈与税や相続税もなく、銀行口座も夫婦でジョイントアカウントを持ったり、一族の資産をまとめてプライベートバンクに運用を任せたりする人もいます。資産運用は種銭は大きいほど有利になります。持てるものがより豊かになる仕組みが整っているのです。
日本では「相続が3代続くと財産はなくなる」と言うエピソードもあるほど相続税率は高く、最高税率は55%です。相続開始以前10年以上を相続人(被相続人)ともに海外に居住していた場合、海外資産は相続税の対象外になる相続税法の「10年ルール」のため、家族全員でシンガポールに移住する日本の富裕層もいるほどです。
超格差社会のシンガポールでは上流階級と街中で出会う機会はあまりありません。車社会で上流階級はバスやタクシーにはあまり乗らないからです。インターナショナルスクールの行事、バレエやお茶などの習い事、ファッションのイベントなどに行くと富裕層や洗練された人たちをよく見かけると感じます。
ファッションのイベントに行くと、「この人たちどこから集まって来たんだろう」と思うくらいおしゃれで洗練された男女が集まります。オーチャードと言われるシンガポールの中心街やマリーナベイサンズというショッピングモールには全身デザイナーズブランドという人もちらほらいます。話しかけると一緒に写真を撮ってくれたり、気軽に接してくれる人もいるので旅行の際に街で人物観察をしてみるのも楽しいかもしれません。
ただし、多くの富裕層は目立たないようにひっそりと生活をしています。セントーサ島やオーチャードなどのホテルのレジデンスや一軒家などに住んでいる人も多いです。富裕層が住むエリアを探索するのも楽しいかもしれません。
外資系投資銀を経てFPとして独立。著書に『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』、監修本にジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中ロ朝鮮半島の激変から人とお金が向かう先を見抜く』 (講談社+α新書)など。
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