もうすぐ子どもを出産予定で、産休・育休を取得します。休みの間の手当や給付金は支給されますが、赤ちゃんのうちも予想以上にお金がかかると友人から聞き、家計が赤字になるのではと心配です。貯金は200万程度しかなく、育休明けも時短で働くので収入が減ります。貯金をなるべく減らさずやりくりするには、どうしたらいいでしょうか。
相談者: 年齢:30歳(女性・会社員)
家族構成: 夫/会社員(29)と二人暮らし
手取り年収: 夫/約330万円 妻/約200万円
加入年金: 夫/厚生年金 妻/厚生年金
退職金: 夫/あり 妻/あり
現在の保有資産は以下の通り
普通預金 約200万円
ある1ヶ月の支出は以下の通り
【今後想定しているライフイベント】
・今冬…第1子出産
・3年後…第2子出産予定
・5年後…マイホーム購入
・18年後…第1子大学進学
・21年後…第2子大学進学
・22年後…第1子就職
・25年後…第2子就職
・30年後…夫、妻定年退職(継続雇用を希望)
【想定している年間イベント】
・ディズニーランドなどレジャー施設、国内旅行など年3~4回
今冬に第1子を出産する女性からのマネー相談です。産休、育休中や育休明けの時短勤務期間は減収となるのに加え、子どもが生まれたら出費が増えることが不安というお悩みです。貯金は200万円ありますが、いざという時のために、生活費で切り崩し続けるのは避けたいということです。収入減と出費増が同時にやってくる出産前後を乗り切り、貯金の切り崩しをできるだけ回避するためのマネープランをご紹介します。
子どもを妊娠、出産する際には大きな費用がかかるものです。たとえば、出産費用は病院や分娩方法によって差がありますが、正常分娩であれば平均40~50万円程度が生じます。しかし、その分、妊婦健診で補助が出たり、一時金がもらえたりと、様々な支援を受けることができます。妊娠、出産する人全員が受け取れるお金には、妊婦健診の時に使える「妊婦健診受診票・補助券」や出産費用を補える「出産育児一時金」などがあり、子どもが生まれてからは、中学を卒業するまで「児童手当」が支給されます(児童手当は所得制限あり)。
また、会社員であれば、産休中には「出産手当金」が出産の日以前42日から出産の翌日以後56日目までを対象として支給されます。出産手当金は、標準報酬日額の3分の2がもらえます。また、育休中には「育児休業給付金」が受け取れます。育児休業給付金は、子どもが1歳となる日の前日まで支給され、保育園に入園できないなどの事情があれば、最大で2歳となる前日まで受け取れます。支給額は、180日までは休業開始時賃金日額(育児休業開始前6ヶ月の賃金を180で割った金額)の67%、181日目以降は休業開始時賃金日額の50%となっています。
このように、特に会社員の場合、勤め先の健康保険や雇用保険から手当や給付が出ますので、出産や育児で休業しても全くの無収入になることがありません。ただし、そうはいっても普段よりは収入が減り、一方で、子どもが生まれるのに伴い出費が増加します。では、出産で増える出費にはどのようなものがあるのでしょうか。
・オムツや子どものベビーグッズ
出産前にはなかった出費の最たるものは、何と言ってもオムツやミルクでしょう。特に新生児のうちはオムツ替えが頻繁で、ミルクも子どもによっては消費量が多いものです。オムツ、ミルクだけで月1万円程度かかる場合もあります。また、赤ちゃんは衣類のサイズが定期的に変わりますし、その他必要なベビーグッズなどを都度買い足したりすると、出費は予想以上に膨らみます。
・水道光熱費
子どもが生まれて在宅時間が長くなると、水道光熱費が高くなります。沐浴、ミルクの調乳に水を使うほか、トイレ、洗濯の回数が増えるので、まず水道料金が上がります。また、赤ちゃんが快適な室温を保つため、冷暖房の使用頻度が高くなり、電気代も上がります。ガス代も、沐浴をしている間は多少高くなります。
・食費
赤ちゃんの月齢が小さいうちは、料理まで手が回らず、「総菜や宅食などを利用する機会が増えた」という人が多いようです。また、離乳食が始まると、子ども用の食材やベビーフードを購入するため、さらに食費がかさみます。
・お宮参り、お食い初め、写真撮影などのイベント費用
子どもの健やかな成長を願い神社にお参りをするお宮参りや、生後約100日で行うお食い初めなど、特に子どもが1歳になるまでは、様々な行事があります。それに伴い、必要な品や衣類をレンタルしたり、神社へ初穂料を納めたり、スタジオで記念撮影をしたりすれば、ここでも費用が発生します。
・内祝い
出産祝いのお返しとして贈る内祝い。内祝いは、いただいた金品の半額程度が目安となります。
このほか、妊娠や出産による体型の変化で母親も新たに衣類が必要になったり、産後ケアにお金がかかったりと、出産後は何かと物入りです。何も対策をしないまま支出していると、気づけば大変な額が出ていた…なんてことも。収入が減る中、出産後の出費増を食い止めるにはどうすればいいのでしょうか。
1.代用できるもので安く済ませる
マタニティウェア、マザーズバッグなど、妊娠中や出産後は、この時期ならではのグッズが多いものです。お金をかけて楽しみたいものですが、専用のウェアやバッグなどは高くつく場合があります。ファストファッションのXLサイズやメンズサイズを利用したり、旅行用の大容量バッグをマザーズバッグとして使ったり、代用できるもので工夫してみましょう。
2.ベビーグッズはレンタルとサブスク、お下がりで乗り切る
ほんの一時期しか使わないものでも、新品を購入すると数万円もかかることがあるベビーグッズ。出産前は必ず必要なものだけ厳選して購入し、いざ赤ちゃんが生まれてから「ないと困る」と感じるものを買うようにすると無駄になりません。また、ベビーグッズは今やほとんどのものが借りられますので、購入と比較して安ければレンタルを利用しましょう。月齢に合わせたおもちゃが届くサブスクリプションのサービスもおすすめです。
リサイクルショップにも、ベビーカーやチャイルドシートが格安で売っています。友人や親戚などが不要になったベビー服、ベビーグッズを持っていれば、ぜひ譲ってもらいましょう。
3.行事や写真撮影にお金をかけ過ぎない
赤ちゃんが生まれると、つい、行事や写真撮影にお金をかけ過ぎてしまう家庭は多いものです。たとえば、お食い初めは専用の食器をレンタルすると数千円かかりますが、100均グッズを代用すれば1,000円以内に納めることも可能です。写真撮影も、チェーン展開のスタジオより個人が運営するスタジオや出張撮影などの方が格安で撮影してもらえる場合もあります。よく調べて工夫すれば、費用をぐっと抑えることができるものです。
そのほか、赤ちゃん用品が買える店舗の割引デーをチェックしてまとめ買いをする、ポイントが分散しないように店舗を絞って購入するなど、少し意識するとお得に買い物ができます。
なお、「子どもが小さいうちは貯め時」とよく言われますが、実際のところ、収入が減る中出費も増えることで「それどころではない」という家庭は多いものです。また、子どもが生まれるまでは毎月できていた貯金が全くできなくなった、という声もよく聞かれます。確かに、子どもが幼い時期は教育費がさほど高くはありませんが、赤ちゃんには意外とお金がかかりますし、産休や育休、時短勤務による収入減は家計に影響するものです。
そのため、「子どもが小さいのに貯金ができていない」と気にし過ぎることはありません。収入が減っているこの時期は、貯金を増やすことよりも、できるだけ貯金を目減りさせないことを意識しましょう。ただし、将来の教育資金や自分たちの老後資金のことは、しっかり考えておきたいもの。貯金を無理する必要はありませんが、児童手当は使わず貯めておく、iDeCo(個人型確定拠出年金)を月の最低掛金額(5,000円)で始めるなど、家計が苦しい時でもできる範囲のことはやっておきましょう。
子どもが生まれた後の出費増は、月3~5万円ほどにもなります。一方、相談者の月収は7万円ほどダウン。合わせて10万円は出て行くお金が増えると考えると、出産後の出費を抑える工夫をしたうえで、可能な限り生活コストの削減もしたいものです。相談者の家計簿から節約ポイントを抜き出してみました。
<通信費を抑える>
菅新政権の目玉政策の一つにもなっているのが、携帯電話料金の値下げです。大手キャリアのスマートフォンを使っている人も「もうすぐ通信費が下がる」と期待しているのではないでしょうか。ただ、具体的な時期は明らかになっていません。今すぐ通信費を抑えるなら、格安スマホの利用を検討してみましょう。相談者の家庭でも、夫婦で月約1万5,000円かかっているスマホ通信費が5,000円程度まで下げられる可能性があります。
<食費を抑える>
子どもが生まれれば自炊が難しくなり、むしろ増えても仕方ないのがこの食費です。ただ、相談者の家庭は、手取り収入に対する食費が高めなのが気になります。夫婦二人なら、今よりマイナス2万円が理想的。食費は意識するだけで節約しやすい支出項目ですので、この機会に少しでも抑えられるようチャレンジしてみたいところです。食費を抑えるには、
・冷蔵庫やパントリーの食材を確認してから買い物へ行く
・買い物リストを作り必要なものだけ買う
・キャッシュ決済でポイントを貯める
・業務用スーパーやPB(プライベートブランド)商品を利用する
・作り置きをする
などが有効です。なお、無理して外食や総菜、宅食などをゼロにするのはおすすめしません。産前産後はできるだけ楽をしつつ、無駄を生まない買い物を心がけましょう。
<買い物を控え娯楽は内容を変えて楽しむ>
大きめの金額が出て行く買い物や娯楽は、収入減&出費増のこの時期は少しだけガマン。出産後は自宅にいる時間が多く、今年の冬は新型コロナウイルスの感染再拡大も気になり在宅時間がさらに増えそうですので、家でお得に楽しめる娯楽を見つけてみましょう。
定額制の動画コンテンツや書籍の読み放題など、月1,000円程度で利用できるサービスもあります。
<医療保険に加入する>
「保険に入ることが節約?」と思いますが、万が一、病気やケガで入院や手術をすれば、貯金から想定外の出費があるかもしれません。そうした事態を回避するためには、あらかじめ医療保険に加入し入院、手術に備える保障を確保しておきます。貯金額を見ても「充分に余裕がある」とは言えず、しばらくは貯めることが難しい家計が続くこともあわせて考えると、必要最低限の医療保障を購入しておくのがおすすめです。
新しい命を迎え入れる出産は、不安なことも多いものです。できれば、お金の心配はせず赤ちゃんのお世話に集中したいですよね。この時期は貯金が増えなくても気にし過ぎず、できるところで生活費をコンパクトにしながら出費増に対応しましょう。
ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。
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