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普通預金口座に眠る貯金の活用法は?コロナ禍で考える有意義なお金の使い方-  FPに聞く資産形成シリーズ
将来に備える

普通預金口座に眠る貯金の活用法は?コロナ禍で考える有意義なお金の使い方- FPに聞く資産形成シリーズ

武藤貴子
2021
02
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お悩み:貯金の仕方やお金の使い方について相談です。私は、お金を使うより「貯金が趣味」のようなところがあり、たまに海外旅行やオリンピック観戦などで使うことはありましたが、それ以外は貯金を頑張ってきました。しかし最近は、普通預金に貯めるだけでいいのだろうか、投資や他の方法も検討してみたいと思っています。また、コロナのことで「いつ何があるかわからない」と考えるようになり、貯金だけでなく、もっと趣味や人生を充実させることにもお金を使いたいです。毎月お金をどうやって運用し、どのくらい趣味などに使っていいのでしょうか。


相談者:34歳 女性(会社員)

家族構成:ご両親と実家暮らし
手取り収入:月約30万円(年2回ボーナスあり)

加入年金:厚生年金
退職金:あり

現在の保有資産は以下の通り
普通預金:約1,460万円(普通預金口座 うち生活費口座約30万円)


ある1ヶ月の支出は以下の通り

1ヶ月の支出

※「未定」は自宅に入れているお金

【今後想定しているライフイベント】
・結婚や出産(未定)

【想定している年間イベント】
・家族旅行

お金のプロからのアドバイス

お金をあまり使わず、貯金に励んできた今回の相談者。普通預金口座にひたすら貯めていく貯金スタイルに疑問を感じ、有意義な活用法を知りたいというご相談です。ご本人いわく慎重な性格もあり、今ある貯金は投資に回すよりも、安全資産(基本的に、元本が保証されている資産)での運用を希望しています。一方で、これから貯めるお金については、一部は投資で増やすことも検討したいそうです。また、日々を充実させるため、今後は貯金だけでなく趣味などにも使いたいとのこと。貯金の活用法や、趣味、自己投資へのお金の使い方について、相談者の事例をもとに解説します

・普通預金口座のお金を預け替えるなら
新型コロナウイルスで生活が激変する中、仕事や生き方、そしてお金の使い方について、改めて考える人が増えています。節約や家計改善のみならず、今回の相談者のように、「お金に困っているわけではないが、より良い運用方法を模索したい」という人も珍しくありません。実家暮らしで「貯金が趣味」の相談者は、年齢から考えても充分な金額の貯金があります。しかし、その全てが普通預金口座に眠っています。現在の貯金は安全資産で運用していきたいとのことですが、どのように活用すべきなのでしょうか。

①お金の役割ごとに口座を分ける
まず、お金の役割ごとに口座を分け、異なるお金が一緒くたにならないようにします。相談者の場合、給与が振り込まれる生活費用口座のほかに、使わないお金を貯めておく貯金用口座の2つの口座を所有しています。これに加えて「予備費口座」を作ることで、生活費以外の突発的な出費に対応することができます。

予備費口座は、冠婚葬祭にかかるお金や年払いの税金、保険料、その他病気やケガに備えるお金などをプールしておくための口座です。相談者は、生活費口座に多めにお金を入れておき、こうした予備費に充てていますが、口座を分けておけば、「年間どのくらいの予備費が必要か」を判断しやすくなります。それにより、予備費を計画的に貯めていくことができるのです。予備費は、いつでも引き出せるよう普通預金口座に現金で用意しておきましょう。


②すぐに使う予定のないお金はネット銀行の定期預金がおすすめ

では、生活費や予備費以外のお金はどのように貯めておけばいいのでしょうか。相談者には、現在の貯金は安全資産で運用したいという希望があり、さらに、すぐに特定の目的に使う予定はありません。そのような場合におすすめの預入先は、「高金利なネットバンキングの定期預金」です。店舗を持たないネット専業銀行や店舗型銀行のインターネット支店など、いわゆるネットバンキングには、メガバンクでは考えられないほど高い金利を提供しているところがあります。中でも、一定期間引き出せない定期預金は、一般的に、普通預金と比べて高金利となっているのです。

たとえば、2020年8月現在、メガバンクの定期預金金利は0.002%。一方、ネット銀行には、その100倍に相当する0.2%の定期預金金利を付けているところもあります。100倍とはいかないまでも、他のネット銀行の定期預金金利も、軒並み高金利です。「当面使う予定がないお金を安全資産で運用したい」という場合は、このようなネット銀行の定期預金を利用してみてはいかがでしょうか。

なお、目的が決まっているお金を定期預金に預ける場合は、満期日をよく確認のうえ、目的別に口座を分けて管理しましょう。


・非課税枠がありいつでも引き出し可能なつみたてNISA

今ある貯金は安全資産で運用したい一方、これから貯めるお金は一部投資に回してみたいという相談者。では、どのような方法がいいのでしょうか。おすすめは、「つみたてNISA」です。つみたてNISAとは、積立専用のNISA(少額投資非課税制度)のことです。

まずは、そもそもNISAとはどのような仕組みなのか簡単に説明しましょう。NISAは、2014年にスタートした個人投資家向けの税制優遇制度です。株式や投資信託などの金融商品に投資すると、通常は、これらの配当や譲渡益等に約20%の税金がかかります。しかし、NISAには毎年120万円の非課税投資枠が設定されており、この範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益に対しては、税金がかからないのです。

では、つみたてNISAは、通常のNISAと比べてどのような特徴があるのでしょうか。まず、NISAが通常買付または積立投資となるのに対し、つみたてNISAの購入方法は、積立のみです。また、つみたてNISAの対象商品は、手数料が安いなど「長期・積立・分散投資」に適した一定の公募株式投資信託などに厳選されており、投資初心者でも始めやすい仕組みとなっています。なお、つみたてNISAの非課税投資枠は毎年40万円です。投資可能期間は2018年から2037年までの20年間で、この間、毎年上限額まで投資したとすると、最大で800万円の非課税投資枠が使えることになります。

NISAとつみたてNISAでは少しずつ仕組みが異なりますが、おすすめしたいのはつみたてNISAです。理由として、つみたてNISAは年間の非課税枠がNISAと比較して少ない一方、投資可能期間が長く(NISAは2014年~2023年)、若い世代が長期投資をスタートしやすい制度設計になっている点が挙げられます。NISAの場合、特に、年間の非課税枠が大きくても使い切れないというデメリットがありますが、つみたてNISAは積立上限額が月3万3,000円(3万3,333円)であり、「上限いっぱいまで積み立ててみよう」と思える金額なのです。

また、NISAには「ジュニアNISA」という主に子どもの教育資金を積み立てる目的で利用できる制度もありますが、こちらは原則として子どもが18歳になるまで口座のお金を引き出すことができません。一方、つみたてNISA(およびNISA)は、いつもでも払い出しが可能で、いざという時には手元にお金を戻すことができます。


・つみたてNISAとiDeCoを上限額まで積み立てる

毎月充分な金額の貯金をしており、今後はその一部で投資にチャレンジしたいという相談者。すでに現金での貯金はしっかりしているため、長期投資を前提に毎月上限額の3万3,000円までつみたてNISAで積み立てるのもいいでしょう。

ちなみに、つみたてNISAはどのような目的で利用する人が多いのでしょうか。つみたてNISAは長期投資でコツコツ資産形成するのに向きますので、子どもの教育資金や住宅資金、老後資金のほか介護資金などを準備するのに活用されています。特に、同じく税制優遇のある「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と併用すれば、非課税投資枠を使いながら、公的年金だけでは足りない老後生活の費用をお得に貯めることができます。

今回の相談者の場合、貯金はたくさんしているものの、特に「○○のため」という明確な目標はありません。老後資金についても、勤め先の年金制度が比較的しっかりしていることから、特に不安はないと言います。だからこそ、お金の用途を問わず、いざとなればいつでも引き出し可能なつみたてNISAは相談者に向いているでしょう。

ただし、公的年金だけで老後資金が不足しないかはきちんと計算する必要があります。現金での貯金も充分ありますが、老後を迎えるまでに様々なライフイベントが起こりえることを考えても、老後資金は別途積み立てておいて全く損はありません。相談者がiDeCoに拠出するなら上限額は月2万円ですので、つみたてNISAも上限まで拠出するとしても、合わせて月5万3,000円です。相談者がこれまでに貯金している金額から考えても、投資に回すお金として多すぎることはなく、また、つみたてNISAの性質を考慮しても「慎重な性格である」相談者が不安なく投資できる方法と言えます。なお、iDeCoやつみたてNISAの積立額は途中で変更することもできますので、今後のライフスタイルの変化に応じて減額も可能です。


・趣味や自己投資にはいくら使っていい?

一方で、新型コロナウイルスという新たな脅威の登場により、世の中は一層先が見通せないものとなりました。しかし、だからこそ、新たな趣味を見つけたり、知識・健康に自己投資したりすることで、人生を充実させたいと考える人は相談者にとどまりません。お金はたくさん持つことが目的ではなく、有意義に使ってこそ意味があります。貯金をしつつ、収入の一部は趣味や自己投資として自分に還元していきましょう。

では、趣味や自己投資に使うお金は、手取り収入の何割程度にするのがいいのでしょうか。よく、家計管理は「貯金:生活費:自己投資=2:6:2」の比率で行うのが良いとされています。相談者の場合、実家暮らしのため生活費の比率が少なく、その分貯金に回せるお金が多くなりますが、手取り収入をこの比率に当てはめてみると、毎月約6万円は自己投資に使っていいことになります。

一方、趣味にかかるお金を「娯楽費」と捉えれば、こちらは収入の2~5%程度が適当で、相談者の収入から換算すると、6,000円~1万5,000円です。趣味と自己投資の明確な区切りは難しいですが、家計管理の観点からすると、この程度は自己投資や趣味に使えるわけです。生活費が変わらず、自己投資に6万円使えるとすれば、相談者の家計はおおまかに「貯金(投資含む)」:生活費:自己投資=約13万円:約11万円:約6万円」となります。これまでの貯金のペースを落として一部は投資に回したり、自己投資や趣味に活用したりし、日々を充実させて欲しいものです。


今だからこそお金と向き合う機会を

今回は、相談者の事例をもとに、より有意義なお金の運用についてご紹介しました。コロナ禍により、多くの家庭で経済状況が悪化する中、今回のような相談は、ある意味で恵まれているとも受け取れます。しかし、世の中が大きく変わり、生き方やそれに伴うお金の使い方を見つめ直したいと考えることは、ごく自然なことです。こうした状況だからこそ、じっくりと家計や資産と向き合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。

筆者プロフィール

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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