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30代共働き3人家族、手取り2000万、 老後も生活レベルを維持するには? -  FPに聞く家計相談
将来に備える

30代共働き3人家族、手取り2000万、 老後も生活レベルを維持するには? - FPに聞く家計相談

武藤貴子
2020
04
10

マネーツリーのブログ『FPに聞く家計相談』シリーズでは、個人資産管理サービス「Moneytree」の利用者が抱えるお金のの悩みや不安に、お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)がお答えします。

【今回の相談者:Mさん(33歳、会社員、男性)】
東京都在住で、会社員のMさんには、同じく会社員の妻(37)と保育園に通う1歳の子供がいます。月収入は手取りで本人が114万円、妻が50万円の計167万円です。

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【Mさんのお悩み】
「最近収入が増え始め、ライフスタイルが少し変化しました。様々なライフイベントを経た上で、この生活を老後も送るために何を準備するべきか見えていません。リタイア(60歳)までにいくら手元に用意すればよいでしょうか?また税金の額も以前より多くなり、できれば控除を受けるなどさまざまな対策をしたり、余剰資金は投資に回して行きたいと考えています。現在は何もできていない将来への資産形成ヘ向けてアドバイスをお願いします。」

現在、Mさんファミリーは、700万円の預金の他、65歳から月額14万円受け取れる養老保険にも加入しているそう。

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※ご夫婦がそれぞれの同意の元口座情報をシェアしています。

また平均的な1ヶ月の支出は約60万円と、少し多めながらも十分な余剰金があるので収入に見合った支出と言えそうです。

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【今後想定しているライフイベント】
- 半年後:第1子の私立保育園入学(学費月10万円)
- 1年後:第2子の出産
- マイホームの購入:3年後
- 子どもたちの進学:高校まではインターナショナルスクール、大学は海外を希望

【想定している年間イベント】
- 海外旅行:年1回
- 国内旅行:四半期1回

お金のプロからのアドバイス

世帯年収が2,000万円と、所得の多い共働き家庭。子どもの進学やマイホーム購入を考えつつ、年数回の旅行も楽しみながら、生活水準を落とさない老後生活のために備えたいとのご相談をいただきました。毎月の生活費を差し引いても、なお充分な余裕のある家計ですので、余剰分を目的に合う形で運用すれば、しっかりと資産形成することができます。
ライフイベントの資金を確保しつつ、老後資金をどのような方法でいくら積み立てていけばいいのか、相談者の事例をもとに解説していきます。

老後のために自分でいくら備えておくべき?

【老後に必要な資金の考え方】
老後生活に必要な金額を見積もる時、平均的な生活費を参考にするのもいいですが、それ以上に大切なのは「自分や家族がどのような老後を送りたいと思っているか」を具体的にイメージすることです。最低限の質素な生活で充分という人もいれば、現役時代にできなかった分、趣味や旅行を思いっきり楽しむ老後生活を送りたいという人もいるでしょう。

ちなみに、標準的な老後生活を送るには、1ヶ月にいくらかかるのでしょうか。総務省の「家計調査報告 家計収支編 2018年」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヶ月の支出の平均は、消費支出(生活を維持するために行う支出)が235,615円、非消費支出(直接税や社会保険料など)が29,092円、合計264,707円となっています。つまり、ごく一般的な老後を送るための1ヶ月の生活費は、約26万円と考えることができそうです。

一方、今回の相談者の希望は、年数回の旅行を継続するなど「老後も生活レベルを落とさないこと」です。これを前提とし、相談者のケースに当てはめて、まずは老後の1ヶ月の生活費を計算してみます。一般的には、リタイア後の生活に必要な収入は、退職直前の7割程度 とされています。これは、高齢になると現役時代と比べて食費などがかからなくなるためです。さらに、リタイアまでに住宅ローンを払い終えていれば、固定資産税やリフォーム費用などを除き、住居費はかかりません。また、この相談者はリタイアを60歳と予定していることから、1年後に第2子の出産を迎えるとなると、リタイアまでに第2子の大学卒業を終え、教育費がかからなくなると予想できます。これらを踏まえ、老後の住居費は月1万5,000円と仮定し、教育費がかからなくなるとした時の老後の1ヶ月の生活費を計算すると以下のようになります。

「かかるお金」
621,802円(現月間支出)- 241,310円(現家賃) - 65,360円(保育園代)+15,000円(老後の住居費)=約33万円(老後必要な月間生活費)

先述の通り、老後は現役時代より食費などがかからず生活費がコンパクトになる可能性がありますが、生活レベルを落とさないという希望があることから、老後の1ヶ月の生活費を33万円としました。なお、3年後に予定しているマイホーム購入のための住宅ローンの支払いは、リタイアまでに終えているものと仮定します。

【必要な老後資金の計算方法】
老後の1ヶ月の生活費が概算できたところで、次に、リタイアから寿命までに必要な老後資金の総額を計算してみます。老後までに貯めておきたい資金の計算方法は、以下の通りになります。

① 60~64歳の無年金期間の生活費
  毎月の生活費×12ヶ月×5年間

② 65歳から寿命までの生活費
 公的年金だけでは足りない金額×12ヶ月×25年間
 ※ここでは90歳と仮定

③ 病気や介護に備えるお金やリフォーム費用、旅行費用など

①~③の「 かかるお金 」の合計から退職金や企業年金、個人年金保険などの保険金、その他老後のために用意できている 「 入るお金 」 を差し引いたものが、リタイアまでに自分で貯めておくべき「 必要なお金 」 の金額です。では、相談者のケースはどうなるのか、この計算式に当てはめて考えてみます(夫と妻の年齢差は考慮しないものとする)。

まず、①でリタイアから無年金時代5年間にかかる生活費を計算します。
毎月の生活費は33万円ですので、1980万円となりました。

「かかるお金」
無年金時代に必要な生活費:33万円×12ヶ月×5年間=1,980万(5年間)

次に、②で65歳から寿命までの生活費を計算します。
厚生労働省の「2018年簡易生命表」によると、同年の日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳でした。私たちが老後を迎える頃には、平均寿命がさらに延びている可能性もあることから、ここでは寿命を90歳と仮定しました。「公的年金だけでは足りない金額」とありますが、ここは①で用いた1ヶ月の生活費(支出)から公的年金などの収入を差し引き、毎月不足する金額を割り出します。今回の相談者の場合、公的年金の見込額は不明ということですので、平均受給額のデータを用いて計算してみます。厚生労働省の「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均受給額は、国民年金が約5万6,000円、厚生年金(国民年金+厚生年金)が約14万5,000円です。仮に夫婦二人がともに毎月14万5,000円を受け取るとすると、29万円となります。
さらに65歳から毎月14万円が受け取れる養老保険に加入しています(90歳まで受け取るとする。年金形式のため、先に②に組み込み計算する)。公的年金と養老保険からの収入を足すと、計43万円となります。

「入るお金」
65歳からの想定年金受取額:14万5,000円×2人=29万円
養老年金保険を足した65歳〜の想定受取額:29万円+14万円=43万円(月額)

「必要なお金」
受取額と生活費:43万円 - 33万円 = 10万円(余剰)

毎月の生活費33万円を引いても、月10万円のプラスとなります。
②では公的年金だけでは足りない金額を計算するため、「10万円×12ヶ月×25年間=3,000万円」となり、この金額を後ほど①と③の合計金額から差し引きます。

ちなみに、将来受け取れる公的年金の見込額を知るためには、「ねんきん定期便」で確認するか、もしくは、さらに詳しい内容を知るには、日本年金機構が提供している「ねんきんネット」(利用登録が必要)を利用してみましょう。一方、自分の退職金額を知るには、勤め先の退職金規程を見る、確定拠出年金の場合は通知を確認するなどといった方法がありますが、会社の人事、総務や年金基金の担当者に聞いてみるのが確実です。

最後に、③で病気や介護、マイホームのリフォームに備えるお金や旅行のためのお金を見積もります。一般的に、病気や介護に備えるお金は200~300万円程度必要とされています。マイホームのリフォーム費用は、マンションなら300万円、戸建てなら500万円が目安です。ここではそれぞれ、病気や介護は300万円、リフォーム費用は500万円とします。

また、年4回(国内3回、海外1回)の旅行を老後も継続するとなると、いくらかかるでしょうか。2019年にJTBが行った調査によると、夏休み時期(7月15日~8月31日)の国内旅行の平均費用は一人あたり36,200円、海外旅行の平均費用は一人あたり227,700円です(1泊以上)。このデータを用い、夫婦二人で60歳から90歳まで毎年旅行するとして計算すると、合計2000万円が必要です。

「かかるお金」
国内旅行:36,200円×2人×年3回×30年間=約650万円
海外旅行:227,700円×2人×年1回×30年間=約1360万円
合計:約2000万円(30年)

病気や介護に備えるお金(300万円)やリフォーム費用(500万円)と合わせると、約2,800万円となります。

①と③の金額を合計し、(②での不足分がなかったため)②の金額を差し引くと、

「60歳時点で手元に必要なお金」
①1,980万円+③2,800万円-②3,000万円=1,780万円

となります。ここからさらに、退職金がある場合は退職金額を引きますが、今回の相談者の場合、退職金はなしという前提のため、老後のために自分で備えておくお金は1,780万円と概算することができます。

老後資金を計算する時に気を付けたいこと

上記のように、まずは送りたい老後生活を具体的にイメージし、さらに現在の1ヶ月の生活費がデータとして見えていれば、そこから老後に必要なおおよその生活費を計算することができるのです。さらに、教育費など老後にかからなくなる支出や、逆に介護の費用やリフォーム費用などかかるようになる支出を整理し、公的年金や退職金などの情報も加え計算式に当てはめるだけで、自分で用意しておくべき金額が把握できます。

ただし、計算した金額は、あくまでも現状から割り出した目安です。たとえば、計算ではリタイアまでに住宅ローンを払い終えている前提にしましたが、リフォーム費用等を除く住居費が毎月かかるようであれば、用意しておくべき金額は変わります。公的年金の金額も、ここでは平均のデータを用いましたが、実際の金額を当てはめれば、より正確な計算ができます。一方で、将来の年金受給額は今後目減りしていき、年金受給開始年齢も引き上げられる恐れがあります。また、寿命までの旅行を毎年4回としましたが、高齢になるにつれその回数は減っていく可能性がありますし、生活費はコンパクトになるとも考えられます。何より、何歳まで生きると仮定するかは人それぞれです。

このように、様々な仮定が変われば、準備すべき金額は変わります。しかし、大切なのは、何はともあれ目安となる金額を計算してみることです。計算して金額として出すことで、ある程度自分で用意しなければいけないのか、それとも、思ったほど用意する必要はないのかがわかるからです。

節税しながら老後資金を賢く貯める方法

では、老後までに貯めておくお金は、どのように準備すればいいのでしょうか。老後資金を自分で貯めるには様々な方法があります。たとえば、勤め先の会社に財形制度が導入されているのであれば、「財形年金」が便利です。これを利用すると、一定金額まで非課税の優遇が受けられます。また、民間の保険会社で取り扱っているものとして、「個人年金保険」があります。60歳や65歳など一定の年齢まで保険料としてお金を積み立て、その年齢になると年金が受け取れる仕組みです。決められた要件を満たすと、税制優遇もあります。

中でも、老後資金を準備する有効な手立てとして注目されているのが、確定拠出年金です。確定拠出年金の特徴は、自分で運用する商品を選び、その成績次第で将来受け取れる金額が変わる点です。つまり、運用成績が良ければ、将来の受取額が増やせるのです。また、確定拠出年金には、高い節税効果という大きなメリットがあります。企業型(企業型DC)と個人型(iDeCo)の2種類がある確定拠出年金ですが、iDeCoに加入した場合には、以下のような税制優遇が受けられます。

1.自分で拠出する場合、掛金が全額所得控除になり、税金(所得税、住民税)の負担が軽減される
2.利息や配当、売却益などの運用益が全額非課税になる
3.年金や一時金として受け取る時に「公的年金等控除」や「退職所得控除」など各種控除が適用され税負担が減る

収入増により、税金対策や控除などを活用したいという相談者。iDeCoで積み立てを行えば、本来かかるはずの税金を手元に戻せるだけでなく、利益に対して課税がないことで、運用により多くのお金を回し複利効果を高めることも期待できます。

では、iDeCoを利用して、将来不足する老後資金を用意する場合、毎月いくらを積み立てればいいのでしょうか。iDeCoは2017年に制度が改正し、現役世代のほぼ全員が加入できるようになりました。しかし、毎月拠出できる金額の上限は、職業や勤務先の企業年金の有無などによって異なります。今回の相談者の場合、夫婦ともに勤め先に企業年金がなく厚生年金のみ加入ということなので、掛金の上限は月2万3,000円となります。余剰資金が充分にある相談者の家計ですので、夫婦ともに掛金の上限まで拠出し、それぞれがリタイアを迎える60歳まで利回り3%の商品で運用した場合に節税できる金額や合計金額などをシミュレーションしてみました。

【夫(積立期間27年間)】

夫(積立期間27年間)

【妻(積立期間23年間)】

妻(積立期間23年間)

夫婦それぞれが毎月2万3,000円の積立をリタイアまで続けると、合計金額は20,586,256円になる試算です。老後までに自分で貯めておくべきお金は1,780万円でしたので、それを上回る2,000万円以上を貯められる計算となります。積立元金の合計は1,380万円ですので、ただお金を寝かせておくだけではもったいと感じますね。このように、iDeCoを利用してお金を積み立てると、積立時、運用時ともに節税効果がとても大きいことがおわかりいただけるのではないでしょうか。

もちろん、これはあくまで試算に過ぎません。しかし、年金受給額の減額も予想される中、自分で用意しておくべき金額を上回る資金を積み立てられるとすれば、安心なのではないでしょうか。

ちなみに、今回の相談者は、二人の子どもの進路として、高校までインターナショナルスクール、大学は海外を希望しており、多額の教育費がかかることが予想されます。また、マイホーム購入を3年後に控えていることから、こちらも計画的な資金確保が必要となります。とはいえ、まだ老後まで時間があり、所得も多い相談者です。教育費やマイホーム購入費用にお金がかかりながらも、計画的に老後資金を積み立てていくことで、安心したリタイアを迎えられるでしょう。

まずは「家計の見える化」を

今回の相談者の場合、生活費をダウンサイジングする必要は必ずしもありませんが、老後資金、教育資金、マイホーム購入資金など、目的別のお金の管理は必要そうです。ただ、すでに毎月のお金の流れが「見える化」できているからこそ、次のステップとして、将来に向けてどのように資産形成を行っていくかを考えることができるのです。「毎月何にいくら支出しているのか」や「資産全体ではいくらなのか」を把握していない人は、すぐに「家計の見える化」を始めてみましょう。それができれば、今後のライフプランで発生する資金が不足する場合でも、努力と工夫で手の施しようがあるからです。

筆者プロフィール

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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