自分にあった投資商品の選び方として、貯蓄型保険・株式・投資信託の特徴、高校生までの子供がいる世帯の投資商品の選び方、大学生以上の子供がいる世帯の投資商品の選び方、を紹介してきました。今回は、子供がいない夫婦「DINKS」向けのポートフォリオを紹介します。
DINKSは2人分の収入があるため、一見すると、生活に余裕があるようにも思えます。けれど、それが必ずしも余裕のある老後生活を保証するとは限りません。老後生活を豊かにするためにも、早いうちから資産形成をすることが重要です。
2人分の収入で生活するDINKSは、お金に余裕があって、すぐに貯蓄が増えていくようにも思えます。しかし、実態としては、充分な貯蓄ができていない人も少なくはありません。子育てがなく、自由時間が多いため、外食や趣味・娯楽で知らず知らずのうちに出費が多くなってしまう人が多いためです。
また、独身時代のまま、お互いの収入・支出に無頓着なケースが多いのも特徴です。それぞれがしっかりと自己管理して、ある程度の貯蓄を持っていればいいのですが、「向こう(パートナー)もお金を貯めているはずだから、これくらい使っていても大丈夫だろう」と思い込んでいる場合は危険です。2人ともがそう思っていると、夫婦が老後に向けて充分な資産を保有しているかを確認しないまま、生活していることになってしまいます。
もし「今、夫婦2人でどれだけの資産があるのか」を知らないのであれば、この機会に確認してみてください。
DINKSの人たちには、節約がなかなか上手にできない人も少なくありません。これまでの生活で特にお金に困っていないため、「節約をしたことがない」という人もいることでしょう。
一度慣れてしまった生活水準を落とすのは難しいものです。年金が主な収入となる老後になってから、「うまく節約できない」では済みません。全く節約をしない生活を送っていたのに、老後になって節約を考えるようになると、ストレスだらけの老後生活になってしまう可能性もあります。
もちろん、老後を支える年金も、(会社員であれば)2人分の厚生年金が受け取れます。しかし、今の水準で、例えば1か月で30万円を超える金額が見込めたとしても、将来の年金支給額は目減りする可能性があります。今40代以下の世代は、3~5割程度の目減りを視野に入れておくべきでしょう。
老後の生活費を上手に節約できなければ、貯蓄から、毎月多額の取り崩しをして生活することにもなります。2人で受け取れる年金額が「今の水準で35万円程度」だと考え、実際に目減りした分を考慮して、実際に受け取れる年金額は20数万円程度と仮定しましょう(注1)。
老後の生活費をあまり節約できないのであれば、1か月で35万円程度はかかってしまう可能性があります(注2)。
そうなると、毎月、資産から取り崩す金額は10数万円となります。つまり、1年で約200万円、20年で4,000万円もの老後資産を「自分たちで」準備しなければならないのです。
注1:厚生労働省「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に示された、厚生老齢年金の平均受給額147,927円より筆者が推定注2:生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」を参考に筆者が推定
では、DINKSが安心して老後を送れるようにするには、どのように資産形成していけばいいのでしょうか。そのためには、現役世代である今のうちから、毎月決まった額を保険や投資に回すようにしましょう。さらに、残った分の一部を貯蓄しておくことも大切です。
保険に加入する場合は、老後の医療費を補うための「医療保険」と生活費の足しにするための「個人年金保険」が役立ちます。また、老々介護の負担軽減を考え、「介護保険(または医療保険などの介護特約)」に加入する方法もあります。
年金が目減りする分を補うため過剰に「終身保険」に加入するよりは、「個人年金保険」を活用しましょう。「終身保険」も生活費が必要になれば解約すればいいと考え方もできますが、タイミングによっては、解約返戻金が総支払保険料よりも下回る可能性があります。本来、「終身保険」は死亡時の保障を目的としており、被保険者が保険金を受け取る前提になっていません。老後資金のために、自分が保険金を受け取れる商品を検討するのであれば、「個人年金保険」などの方が適していると考えられます。
投資を目的にする場合は、税制上の優遇も受けられる「NISA・つみたてNISA」、「確定拠出年金(企業型・個人型)」を活用しましょう。
ただし、「個人年金保険」と「確定拠出年金」については、掛けすぎに注意が必要です。「個人年金保険」は、近年の超低金利の影響で、途中解約した場合は、解約返戻金が支払った保険料総額より少なくなるものが多くなっています。また、「確定拠出年金」は、原則として解約することができません。将来、一時的に資金が必要となった場合などに備えて、いざという時には換金できる形で資産形成しておくことも大切です。
では、毎月5万円ずつ投資にまわすとして、どのようなポートフォリオにするのが良いか、その例を紹介しましょう。老後資金を意識しなければならない年齢かどうかで、2つのパターンを用意しました。
このポートフォリオ設計における補足点は下記の通りです。
保険については、個人年金保険以外に医療保険の加入を検討するべきです。ただ、「投資」にあたる保険ではないため、この金額には含めていません。
少額での積立の場合、国内株式は省きましょう。5万円以内の場合、購入できる銘柄はあまり多くありません。株式累積投資を使えば、毎月5万円でも多くの銘柄を購入できますが、一部の証券会社しか取り扱っておらず、手数料も高くなってしまいます。
より高いリターンを求めて、ハイリスクな投資をするのであれば、株式投資信託の割合を増やし、保険や海外債券への投資額を抑えましょう。逆に、リスクを抑えたいのであれば、保険や海外債券の投資額を増やすと良いでしょう。
なお、より積極的に資産形成をするのであれば、夫婦のそれぞれが5万円ずつ出しあって、毎月10万円の積立投資をするのもひとつの手です。
DINKSは2人分の収入がありますが、だからと言って、その分だけ老後が楽になるという保証はありません。老後の生活費がかさみやすかったり、家族のサポートが得られない分だけ介護施設などの利用が増えたりと、老後資金をより多く用意しておかなければならないでしょう。
早いうちから、無駄な出費を抑え、資産形成をしていくことが大切です。もちろん、今の生活を犠牲にして我慢しすぎる必要はありませんが、少しでもゆとりある老後生活が送れるようにしましょう。
ねこのて合同会社 代表。1978年大阪生まれ。1級ファイナンシャルプランニング技能士。保険と投資をミックスした「守りと攻めを両立させる」資産形成プランを提案する。大学の非常勤講師を務めるなど、金融教育にも積極的に取り組んでいる。
当社ウェブサイトは、外部サイトへのリンクを含んでおります。リンク先サイトでの個人情報への取扱いに関しては、そのリンク先サイトでの個人情報保護方針をご確認ください。 当社の個人情報保護方針はそのリンク先サイトで提供されている内容に責任を負うものではありません。
人生100年時代を支えるために
Moneytreeで資産管理を始めよう